ちょっと前までユビキタスという言葉をよく聞いたが、最近は世間も飽きたのかすっかり聞かなくなった。一部には「もう達成されたからだ」という人もいるが、全然違うと私は思う。確かに、コンピューターはどこにでもあり手軽に利用できるようになったが(ニンテンドーDSiだってWebブラウジングができる立派なネット端末だ)、肝心のネットインフラはそこまで整備されていない。家庭には光ファイバーのような高速回線が入り込んできて安く利用できるようになったが、一歩外に出ればネットに繋ぐのはそう簡単ではない。アメリカのような公衆無線LAN大国と違い、日本ではモバイルというと専ら携帯電話方面の話になってしまい、コストもかかるし知識もそれなりに要るからだ。
それでも何とか外出先で様々なデジタル機器を簡単にネット接続したい、というニーズは多くの人が持っていた。イーモバイルやDoCoMoのデータ通信カードがあればPCはネットに繋げるようになるが、携帯用ゲーム機は繋げない。最近は無線LAN対応のデジカメがあって撮った写真をすぐアップできたりもするが、データ通信カードはデジカメには入らない。iPhone3GSをちょっと改造してモデムとして使い、ネット接続するテザリングという手法もあるが、これはこれで相当な知識が必要だしグレーな部分もあるため、誰でもできるものではなかった。
そんな中、マニアはモバイルルーターに注目してきた。これはデータ通信カードが入る小型の無線LANルーターで、PCやゲーム機とは無線LANで繋ぐ。ルーターから先は3Gの電波でネット接続するわけだ。だが、これまでのモバイルルーターはどれもそこそこ大きく、カバンに入れて毎日持ち歩くには結構キツい。他にも電池が持たないとか発熱がかなりあるなど悩ましい点が多く、完全な解決策ではなかった。
だがイーモバイルから、ついにというかとうとうというか、D25HWという超小型のモバイルルーターが登場した。私も発売日直後に飛びついて買った口だ。これはその名を「ポケットWi-Fi」というだけあって、電池込みで80gと非常に軽い。写真のようにカイロみたいな形をしており、手の中に入ってしまうサイズで、胸ポケットに入れて外出しても全く痛痒を感じない。これ自体がデータ通信カード+無線LANルーターという構造になっており、機器は5台まで同時接続できる。ドライバーを入れるわけではなくただ無線LANに繋がればいいので、MacでもWindowsでもPSPでもニンテンドーDSiでもお構いなしに繋げる。外での友達数人との通信対戦も、ネット回線のない会議室でのPCを複数使ったプレゼンでも、とにかくこれ1つ持っていればOKなのだ。
バッテリーの容量は1500mAhで、連続通信時間は公称4時間。まだ私もそこまで使い込んでいないが、そこそこ持つ気はする。話半分としてもこのサイズで2時間ネット接続できれば十分だと思う。回線はイーモバイルの一般的なもので、速度は下り最大7.2Mbps。もちろん実際にはそんな速度は出ないが、出先でWebブラウジングしていて遅いと感じることはないし、そもそも使い方から言って速度自体はさほど必要としない代物だ。機器との接続は簡単。電源を入れてから20秒ほどでネット接続できるようになるが、PCやゲーム機の方からは「D25HW....」という名の接続先を選んで5桁のWEPキーを入力するだけ。これも大抵の機器では一度入れておけば設定を覚えているので、次から何度もWEPキーを入れる必要はない。
これを持っていると、何というか「自分の周りにインターネットがついて来ている」感覚で、しかもPCだけでなく様々な機器から繋げるので非常に便利だ。ただ一つの問題は、これがあると今までネット接続が障害で買えずにいた他のグッズも買ってしまうことだ。私は「回線が確保できたのだからこれでiPhoneと同じことになる」と考え、iPod touchを買ってしまった。のみならず、「せっかく回線があるんだから薄くて軽いモバイルPCもなければ勿体ないだろう」と、ついにVAIO Xにまで手を出してしまいそうだ。そういう意味では小さいくせに非常に危険な代物である。ん? 消費拡大、景気回復のためには大変良い商品ということになるのかな(笑)。(秋葉好夫)


