NECがすごい技術を開発した。ちっぽけなボタン電池(写真)程度の電力で、ハイビジョン動画が十分滑らかに見られるビットレート(27Mbps)のデータを、無線でやり取りできる技術だ。その技術を搭載した無線LSIの試作にも成功しているため、将来は非常に小さくて軽いのに、驚くほど滑らかな映像を受信できる動画端末が登場するかも知れない(例えば子供の頃の夢物語だった腕時計型テレビのような......)。
これまでの無線技術では、数mWの電力を使い、最大3Mbps程度のレートで伝送するのが精一杯だった。3Mbpsというのは微妙な数字で、iPhoneのような小さな画面で見る分には十分すぎる滑らかさの動画になるが、大型テレビやパソコンの大型モニタだと粗さが目立つレートだ。地デジのビットレートは約15Mbps、BSデジタルは24Mbpsなので、ハイビジョン信号を送ろうとすると3Mbpsでは苦しいことになる。
ところが新技術を使うと、ボタン電池でもまかなえるわずか3mWの小電力で、27Mbpsという大容量データが送受信できるようになる。ボタン電池というのは電卓などの小型機器や補聴器などの超小型機器によく使われていて入手も容易だが、なんせ小さいので大きな電力は取り出せない。ではなぜこんな小さなエネルギー源で滑らかな動画を送れるようになったのか。
理由の一つが、速度や電力性能がこれまでの約10倍にもなる独自の時分割復調方式を開発したこと。電源電力が今までと同じでも圧倒的に効率が良いわけだ。そしてもう一つが、これまではただのノイズとして捨てられていた不要な電波を、電力として回収、利用する道を付けたこと。これまで雑音や妨害波などは、無線LSIの中で熱エネルギーになりLSIの外に何となく捨てられていた。考えてみれば勿体ない話ではないか。そこで今回は精密な復調方式を用い、必要な音や映像はきっちり拾って再現し、これら以外のノイズはノイズとして区別して電源電力に変換するようにした。結果として感度も上がり、省電力にもなったわけだ。
LSIと太陽電池を組み合わせるような荒技を使わなくても、一般的な半導体製造プロセスだけで実現できる省エネを考えたNECは偉いと思う。(秋葉好夫)







