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記録メディア特集記事[イベント編]
グリーンIT政策国立公文書館におけるアーカイブの課題電子文書の長期保存とISO/DIS 11506:COM/COLD光ディスクの現状と将来
 2009年3月10日、発明会館(東京都港区)にて開催された講演会「デジタルアーカイブ現状と光ディスクの役割 −デジタルアーカイブメディアとしての光ディスクの可能性を探る−」のレポートをお届けします。   
 この講演会は社団法人日本記録メディア工業会の主催によるもので、今回は「デジタルアーカイブ」というテーマを中心に講演が行われました。
 この日は4人の方たちの講演が行われましたが、それに先立ち、日本記録メディア工業会・常務理事の山口温敬氏から「講演会開催に当たって」と題して、近年、情報の長期保存の需要が高まっているというお話があり、2008年11月14日に日本記録メディア工業会から発表されている記録型DVDと記録型BDのそれぞれの世界需要予測のご紹介がありました。
「グリーンIT政策」 経済産業省商務情報政策局 情報通信機器課 高濱 航氏
 2007年5月、安倍総理(当時)は「2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量の半減」の目標を提案しました。そしてその目標を実現させるために2008年3月「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」を策定し、そのなかで重点的に取り組むべき21の革新技術を選定しました。
 その選定された技術を支えるのはIT技術です。ITは自動車の電子化による燃費の向上、ICタグによる流通の効率化、在宅勤務、TV会議等インターネットによる社会の効率化などにおいて大きく貢献しています。その例としては、10年前と比べてITエアコンが75%、冷蔵庫が60%、テレビは80%の省エネを実現しています。
 2008年5月に発表された「2030年エネルギー需給見通し」によると、CO2削減のための政策を最大限導入すると、現状のまま何もしないケースと比べて排出されるCO2の量が4.5億トンも少なくなり、そのなかでグリーンITの効果は1.3億トンに達するという見通しが紹介されました。
 しかしIT機器そのものによる消費電力の増大も懸念されており、情報化社会の進展に伴い、インターネット上の情報量が急増し、国内のIT機器による消費電力量が2025年には現在の5.2倍、国内全消費電力量の約20%になる恐れがあると見積もられています。そこで、次世代のIT基盤「グリーン・クラウドコンピューティング」の実現を目指していくとしています。これはIT資源を「所有」せず、ネットを通じて必要な分だけ「利用」する形態として、クラウドコンピュータを活用するなどして、グリーンITの実現を目指すというものです。この、グリーン・クラウドコンピューティングの実現を目指すため、グリーン・クラウドコンピューティング・プロジェクトが発足し、半導体レベル、IT機器、システム、データセンターレベルの3つのくくりで省エネを図っていくことにより、実現を図ります。特に、ネットワーク内のデータ流通・保存の最適化を行うことにより、省エネにつなげていくことが出来ます。
出典:講演会配布資料より
 そのほかグリーンITにおける政府の役割としては、生産段階だけでなく、使用段階やリサイクルまでを含む、企業のグリーンITへの貢献を評価する枠組みを確立することが必要です。そこで産学のグリーンITの取り組み促進の一環として、「グリーンITアワード」を創設、2008年9月30日、経済産業大臣賞、商務情報政策局長賞などが授与されました。
 また2008年2月、「グリーンIT推進協議会」が産学官の強化の場として設立され、IT関連業界、研究機関、大学、政府を含む連携を強化、さらに海外のフォーラム等とも連携し、国際的リーダーシップを発揮するとしています。すでに「グリーンIT国際シンポジウム」が2008年5月に東京、2009年2月16日にシンガポール、同18日にマレーシアで開催されました。2008年5月のシンポジウムでは米国2団体・Climate Savers Computing InitiativeとThe Green Grid との間で協力関係の覚書を締結しました。 今後のグリーンITは、「環境貢献の見える化」を通じて新たな価値観の醸成、社会的な信頼の向上、さらにビジネスの成果にも直結するというような好循環を生むことが、グリーンITを推進していく最大の意義であるといえます。
国立公文書館におけるアーカイブの課題 独立行政法人国立公文書館 理事 高山 正也氏
 国立公文書館は、本館(東京都千代田区)・つくば分館(茨城県つくば市)・アジア歴史資料センター(東京都千代田区)の3つから成り立っており、職員数:42名、所蔵資料の量は移管公文書:約65万冊、内閣文庫:約48万冊。国立国会図書館と比較すると、国立国会図書館が出版物を扱っていることに対し、国立公文書館はオリジナルの文書をカバーしているという点が異なっています。
国立公文書館の業務は国立公文書館法によって定められており、その主な内容は、移管を受けた歴史資料として重要な公文書等を保存し、一般の利用に供すること、重要な公文書の保存・利用に関する情報の収集、整理、提供、調査研究を行うこと、重要な公文書等の保存及び利用に関する研修を行うこと、などが挙げられます。
 現在、日本の地方公共団体における公文書館の数は、都道府県公文書館が37、政令指定都市公文書館が7、市区町村公文書館が13、合計50館あります(2007年9月現在)。
 海外の公文書館と職員数で比較すると、下図のようになり、日本の公文書館の体制が非常に遅れていることが窺えます。
近年はデジタル情報が指数的に増大しており、有用な情報は民間、個人のデータベース、ブログ等に存在し、インターネット上の情報をすべて収集することは極めて困難な状況にあります。
出典:講演会配布資料より
 以上のような現状を踏まえ、文化庁と慶応大学が中心となって“MLAの連携”が提唱され(MLAは、それぞれM=Museum、L=Library、A=Archiveのことを指します)、そこで日本国内の博物館、図書館、文書館が、館種を超えたデジタル化による仮想的なコレクションの構築を目指して「デジタル情報資源ラウンドテーブル」(仮称)が発足しました。
 MLAの連携は世界的な動向であり、アメリカではWorld Digital Library、欧州ではEU27カ国が参加するEuropeana(欧州デジタル図書館)などがあります。
 国立公文書館におけるデジタルアーカイブに関する取り組みとしては、1)デジタルアーカイブの構築・運用、2)デジタルアーカイブにおける検索補助機能の充実、3)インターネット展示等、デジタルコンテンツの提供、4)国の保存利用機関及び地方自治体の公文書館との提携、ネットワーク化、が挙げられます。
 その具体例として、国立公文書館が運営するアジア歴史資料館のデジタルアーカイブがあります。2001年10月にサービスが開始され、明治から昭和初期・終戦までの公文書をすべてインターネット上で公開しています。そのデータ量は2008年8月末現在で1700万画像あり、2012年度までに3000万画像を目指しています。
 今後の国立公文書館のデジタルアーカイブには、Born Digital (生まれながらのデジタル・データ)のアーカイブへの対応、保存するデータの範囲とその方法、利用環境の確保、メタデータの作成・管理に関する標準的ルールの確立、などの課題があります。
そして公文書館だけでなく、MLA連携によって各機関が保有するコレクション全体をインターネットで一元的に利用できるよう、そして検索結果から各機関のデータベースへ案内することにより、各機関のデータベースの活用が進むことを目指しています。
電子文書の長期保存とISO/DIS 11506: COM/COLD 社団法人日本画像情報マネジメント協会 ISO委員会委員、コダック株式会社 ドキュメントイメージング営業本部シニアリサーチャー 楢林 孝一氏
 マイクロフィルムは1928年コダックが最初の商用マイクロフィルムシステムを発売し、その後、記録と保存性を追求して発展したもので、肉眼でも読める、500年といわれる期待寿命、陳腐化しない、非改ざん性、低い管理コスト、などの長所がありますが、検索性、アクセス性でコンピュータに劣るなどの短所があります。
 一方デジタルによるデータの保存においては、ダイナミックな処理能力、アクセス性において優れていることが長所、高い運用コスト、メディアの安定性、技術の陳腐化、などが短所といえます。したがって、マイクロフィルムとデジタルのそれぞれの長所を生かして、データを保存することが求められます。
 記録のライフサイクルから見ると、データの作成当初は、頻繁にアクセスされるのでオンラインアクセスが最適ですが、時間が経つにつれてアクセス件数も減少し始めます。サーバの効率などから光ディスク、磁気テープなどの電子媒体に変換され、さらに証拠/参照などの利点と、長期保存性からマイクロフィルム保管が適切となります。
出典:講演会配布資料より
 そこで、2008年11月15日に新しい国際規格として、電子文書の長期保存のための国際規格 Document management applications-Archiving of electronic data- Computer Output Microform(COM)/Computer Output Laser Disk (COLD)が ISO 11506と決定され、現在出版準備中です。この国際規格は、デジタル化したデータ・イメージを、COM(マイクロフィルムなど)とCOLD(光ディスク)に並行記録するもので、光ディスクの検索性とマイクロフィルムの保存性といった、両者の長所を生かしたシステムが構築できるデータ保存の方法であるといえます。
 マイクロフィルムによる電子文書の長期保存における最大の長所である証拠性を生かして、今後さらに広く使われることを目指しています。
光ディスクの現状と将来 パナソニック株式会社AVCネットワーク社 デバイス事業グループ メディアビジネスユニット 技術グループマネジャー 長谷川 博幸氏
 記録型光ディスクとして年間200億枚弱も消費される状況のなかで、Blu-ray Disc(BD)も成長の兆しが出始めており、2009年は6000万枚程度の市場を形成すると思われます。
 BDはパナソニックの長い歴史のなかで培われた相変化材料に関する知見とカバーレイヤー形成手法などの生産技術の開発により生まれました。ハードコートによる対指紋性の改善など品質的にも十分な配慮がされています。相変化材料の構造解析などをJASRI(高輝度光化学研究センター)の大型放射光施設:SPring-8で行い、層変化材料のさらなる、記録安定性向上を行っています。
 最近では、光ディスクに関して、アイリングモデルを採用した加速試験による寿命推定法のISO化が完了しました。BDは、アレニウス法により100年以上の寿命が推定されています。現在はDVDのみであるISO規格の、BDによる規格化が望まれます。
 光ディスクは様々な大容量化に向けた開発が行われていますが、現在のところ容量ではHDDや磁気テープに及びません。しかしながら、その30年以上と推定される長寿命はアーカイブに適しています。光ディスクは上位規格(BD)が下位規格(DVD,CD)を再生するという上位互換が確保されており、将来の再生機不足という懸念は大きくありません。
 最近の世界的に扱われる情報量の80%は、メール、ドキュメントなどの再利用に乏しい非構造化・固定データで、このデータが、加速度的に増大すると予測されており、2006年は200Exabyteであった情報量が、2011年には総ストレージ容量が1000Exabyte近くになると想定されています。それに伴って、HDD主体のデータセンターでは、その使用電力量の増大が懸念されており、2006年に対して2011年時点で、このまま何もしなければ発電所10基分の電力消費の増大が見積もられています。光ディスクの優位性としては、容積効率は、HDDの3.95GB/ccに対し、50GB BDの3.7GB/ccとあまり変わらないのに対して、CO2エミッションはHDDの108トンに対し、2.4トンと非常に小さいことにあります。このことは、データを記録メディアに移すことで、HDDから削除することになり、HDDの容量を確保し、新規増設台数も削減できるため、電力量の削減につながり、エコにもなります。データ参照方法・アクセス方法などの課題がありますが、テープより省スペースでデータを保存可能と考えられます。
出典:講演会配布資料より

 以上のことから、HDDと光ディスクの組み合わせによる、Hybrid Storageは容量とアクセス性、グリーン IT性を備えた優れたソリューションといえます。マイグレーションの回数も大幅に減らすことが可能です。
 光ディスクの優れた特徴としては、非接触記録再生、ランダムアクセスが可能、長期保存信頼性、再生環境の長期継続性が挙げられ、情報量が爆発的に増加するなかで、アーカイブ用途に適切で、拡大が期待でき、CO2排出量の削減に期待でき、TCC抑制も同時に実現可能です。課題としては、メモリー階層構造をシームレスにつなぐ仕組みが必要となります。

 低炭素社会に貢献する光ディスクを中心に、パナソニックは国際的に訴求活動を続けています。

取材・文/株式会社 ふじわらロスチャイルドリミテッド
最終更新日:2009年4月20日
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